
監修 大森武
専門学校で二輪整備の基礎から応用までを学び、卒業後は某国産バイクメーカーにて整備士としてキャリアをスタート。その後はバイク査定士としても活躍し、日々多種多様な車種と向き合っています。
現在の愛車は、ハーレーダビッドソンXL1200CX ロードスター。
“とにかくバイクが好き”という想いを原点に、初心者からベテランライダーまで幅広い層に向けて、信頼できる情報提供をモットーとしています。
監修 大森武
専門学校で二輪整備の基礎から応用までを学び、卒業後は某国産バイクメーカーにて整備士としてキャリアをスタート。その後はバイク査定士としても活躍し、日々多種多様な車種と向き合っています。
現在の愛車は、ハーレーダビッドソンXL1200CX ロードスター。
“とにかくバイクが好き”という想いを原点に、初心者からベテランライダーまで幅広い層に向けて、信頼できる情報提供をモットーとしています。
警察は、日々社会の治安を守るために活動しています。その中でも、交通の安全を第一に考え、違反車両の取り締まりや交通事故の抑止に尽力するプロフェッショナル集団が「交通機動隊」です。そして、彼らが使用する専用のバイクが「白バイ」と呼ばれる警察車両です。バイク好きなら一度は憧れたことがあるのではないでしょうか?
しかし、なぜ白バイは白色なのか?なぜ特定のメーカーの車両が選ばれているのか?
今回は白バイの歴史と現在採用されているモデルについて、詳しく解説していきます。
現在、日本の警察で使用されている白バイは、その名の通り白色の車体が特徴です。しかし、最初から白色だったわけではありません。
白バイが日本で初めて導入されたのは 1918年(大正7年) のこと。この時、警察が試験的に導入したのは、アメリカの「インディアン」社製のオートバイでした。当時の車両は目立つように 赤色 に塗装されており、通称「赤バイ」と呼ばれていました。
しかし、1936年(昭和11年)になると、欧州の警察車両のカラーリングを参考にし、現在の白色へと統一されました。これが「白バイ」の誕生の瞬間です。
それ以降、日本の警察車両として全国に普及し、現在に至るまで「白バイ」という名称で親しまれています。
白バイには、基本的に 大型バイク が採用されています。これは、白バイが果たす役割と深く関係しています。
白バイの主な任務は、高速道路や一般道での 交通取り締まり や 事故対応 です。そのため、高速での追跡や長時間の巡回に耐えうる 安定性・耐久性・高速性能 を備えたバイクが求められます。
かつては、「目黒製作所」が製造したオートバイが白バイとして活躍し、その後、日本の大型バイクメーカーが次々と白バイ用の車両を開発しました。
この流れが定着し、現在でも 大型バイク=白バイ向け というイメージが定着しています。
現在の白バイに採用されている車両の多くは、 4気筒エンジン を搭載しています。これには歴史的な背景があります。
1970年、日本警察が採用したのが Honda CB750 Four でした。このバイクは 世界初の最高速100km/hを超える量産バイク であり、警察車両として理想的な性能を誇っていました。
CB750 Four のスペック
当時、このバイクに匹敵する高性能な車両は世界でもほとんど存在せず、警察は即座に白バイとして採用。以来、多くの高性能バイクが4気筒エンジンを採用するようになり、その流れが現在の白バイにも受け継がれています。
では、白バイと一般の市販車にはどのような違いがあるのでしょうか?
白バイは、通常の市販車にはない以下の装備が追加されています。
市販車とエンジン性能自体はほぼ同じですが、以下の点が白バイ専用にカスタムされています。
白バイは市販車と大きく異なるわけではありませんが、警察の業務に適した細かいカスタマイズが施されています。
現在、日本の警察で採用されている白バイの車種は、以下の4モデルです。
それぞれのモデルには、末尾に 「P」 の文字が付きます。これは「Police(警察仕様)」を意味しており、各メーカーが警察用に特別設計したモデルであることを示しています。
それでは、これらのモデルについて詳しく解説していきます。
Honda CB1300Pは、CB1300スーパーボルドールをベースに、警察の白バイ用に特別仕様として開発されたモデルだ。この車両は、高速道路や市街地での巡回、取り締まり活動を効率よく行うために、様々な専用装備を施されている。
CB1300Pの心臓部には、水冷4ストロークDOHC直列4気筒エンジン(1284cc)が搭載され、最高出力は100馬力に調整されている。市販車のCB1300スーパーボルドールと基本的なエンジンスペックは同じだが、警察用の白バイとしての運用を考慮し、より安定したパワーデリバリーと耐久性が求められている。
CB1300Pの車体サイズは以下の通り。
しかし、白バイ仕様ではサイドボックスや赤色警光灯、拡声器などの装備が追加されるため、実際の重量はさらに増加する。特に、後部のボックスには無線機器や書類、違反切符などが収納されており、運用に必要な装備が充実している。
CB1300Pは市販車にはない警察専用の装備が施されている。主な改造点として以下が挙げられる。
CB1300Pの燃料タンク容量は21リットルで、市販車モデルと変わらない。大排気量のエンジンながらも、長時間の巡回業務にも耐えられる設計となっている。燃費は走行環境によるが、一般的にはリッターあたり15km前後の実燃費が期待できる。
このCB1300Pが日本の警察に正式導入されたのは2009年。それ以前の白バイには、CB750PやVFR750Pなどが採用されていたが、排気量の向上とともに、より高いトルクと耐久性が求められるようになった。特に、高速道路での巡回や違反車両の追尾において、大排気量の直列4気筒エンジンは有利に働く。
CB1300Pは現在も最新のCB1300シリーズをベースにした形で生産・運用されている。警察の要望に応じて、装備や電子制御系がアップデートされており、各都道府県警ごとに微妙な仕様の違いも見られる。また、ABSやトラクションコントロールの進化により、安全性も向上している。
今後もCB1300Pは、日本国内の白バイとして、高速道路や市街地の安全を守る重要な役割を担い続けるだろう。スにアップデートが続けられている。つまり、白バイは常に最新技術が投入されたモデルが採用されているのだ。
ホンダ VFR800P は、市販モデルである VFR800 をベースに、警察の白バイ用にカスタマイズされた特別仕様のバイクだ。白バイの多くは並列 4 気筒エンジンを採用する中で、このモデルは珍しく V型 4 気筒エンジン を搭載していることが特徴だ。ホンダの VFR シリーズは、かつて耐久レースなどで培われた技術をフィードバックしたモデルであり、高回転域でのスムーズなパワーフィールと耐久性の高さが魅力とされている。
このバイクが警察に採用された背景には、ホンダが V型エンジンの特性を活かしたモデルを積極的に警察に提案した経緯がある。国内の一般ユーザーには V 型 4 気筒エンジンがあまり人気を得られなかったため、警察用の白バイとして活躍の場を見出したとも言われている。結果的に、白バイ隊員からの評価は高く、長年にわたり運用されることとなった。
VFR800P の最大の特徴は、やはりその V型 4 気筒エンジン だ。一般的な並列 4 気筒エンジンと比較して、コンパクトな設計が可能でありながら、独特のトルク特性とスムーズな加速感を持つ。
このエンジンは、低回転域でもトルクを発揮し、安定した走行性能を実現している。白バイの主な用途である都市部でのパトロールや高速道路での取り締まりに適したバランスの取れた出力特性を持っている。
VFR800P の基本的な車体サイズは以下の通り:
警察仕様の装備が追加されるため、実際の全幅や全高はもう少し大きくなる。白バイとしての用途に合わせて、通常の VFR800 にはない専用装備が多数搭載されている。
主な白バイ専用装備
特にパニアケースは、交通違反の取り締まりで使用する書類や装備を収納するために大型化されており、単なるツーリングバイクとは異なる機能性を持っている。
基本の 車両重量は 233kg で、ここに警察仕様の装備を追加することで、さらに重量が増加する。VFR800P はホンダ独自のアルミ製フレームを採用しており、剛性と軽量性を両立しているため、白バイとしての長時間の使用にも耐えうる設計となっている。
燃料タンクは 21 リットル を確保し、市販車の VFR800 と同じ容量だ。これは、白バイとしての長時間運用を考慮したものであり、一度の給油でより長い距離を巡回できるようになっている。
ホンダが V 型 4 気筒エンジンを採用した背景には、単なるパフォーマンス向上だけでなく、エンジンの耐久性やコンパクトな車体設計という利点があった。当時、国内市場では V 型エンジンの人気があまり高くなかったため、ホンダはこのエンジンの活躍の場を広げるために 警察向けの白バイとして提案 したという経緯がある。
実際に導入されたのは 2000 年 で、それまで白バイの主流だった CB750P や CB1300P とは異なる乗り味が特徴だった。当初は V 型 4 気筒の特性に戸惑う隊員もいたが、
が評価され、結果的に白バイ隊員からの評判も良かった。特に、一般道でのパトロール時に 中低速域での安定感が高い ことが好まれたと言われている。
VFR800P は長らく運用されてきたが、後継モデルとして ホンダ VFR1200P が登場したことで、徐々にその役割を終えていくこととなった。VFR1200P は排気量を大幅に増やし、より高性能な電子制御システムを搭載することで、現代の交通取り締まりに適した仕様となっている。
しかし、VFR800P は V 型 4 気筒エンジンを搭載した 数少ない白バイ であり、その独特な特性と扱いやすさから、一部の隊員には根強い人気があったと言われている。
ヤマハ FJR1300P は、市販モデルである FJR1300 をベースに、警察の取り締まりや巡回業務に適した改造が施された白バイ仕様の特別モデルだ。元となった FJR1300 は、スポーツツアラーとしての高い走行性能を持ち、長距離巡航に適した装備が充実している。それを白バイ仕様へとカスタマイズし、警察業務に最適化したのが FJR1300P だ。
このモデルの心臓部には、水冷 4 ストローク DOHC 直列 4 気筒エンジンが搭載されている。排気量は 1298cc で、最高出力は 143.5 馬力に設定されている。これは CB1300P や VFR800P などの国内仕様白バイと比較しても、かなりのハイパワー仕様である。強力なエンジン特性により、加速性能はもちろん、高速域での巡航性能にも優れているのが特徴だ。
FJR1300P の基本サイズは、以下の通りだ:
一般的な白バイと同様に、FJR1300P も警察業務用の装備が追加されることで、市販モデルよりもサイズが若干大きくなる。左右には大型のパニアケースが装備され、後方には赤色灯や無線機アンテナが取り付けられている。さらに、警察車両ならではの拡声器やサイレンが搭載され、電装系の強化も施されている。
また、FJR1300P のフレームは市販モデルと共通ながら、警察車両としての用途に耐えられるようにサスペンションのセッティングが変更されている。前後には高性能な調整式サスペンションが採用され、長時間のパトロールや高速道路での取り締まりでも安定した走行を可能にしている。
基本の車両重量は 268kg だが、ここに白バイ装備の追加によってさらに重量が増す。これは他の白バイと同様の傾向であり、警察車両としての堅牢性と安定性を確保するための調整が行われている。
燃料タンクは市販車モデルと同じく 25 リットルの大容量タンクを搭載しており、長距離パトロールにも対応できる。これは VFR800P(21 リットル)や CB1300P(21 リットル)と比較しても多く、特に高速道路での巡回や長時間の取り締まり業務には適した設計となっている。
FJR1300P は日本国内での導入が 2014 年に開始された。この時点で、従来のホンダ製白バイに対して新たな選択肢として登場し、一部の地域では VFR800P や CB1300P に代わる形で採用が進んだ。
また、FJR1300P の特徴的な点として、海外での導入実績があることが挙げられる。特にアメリカでは、2018 年に正式に導入が開始され、各州の警察や高速道路パトロール隊が運用を開始した。もともとアメリカ市場では FJR1300 の市販モデルが人気を誇っており、その信頼性や快適性が評価されていたことが、白バイ仕様の導入につながったと考えられる。
さらに、アメリカ以外にも、ヨーロッパやオーストラリアなど複数の国で FJR1300P が採用されている。これは、白バイとしての運用実績が国際的に認められた証拠であり、日本国内だけでなく、グローバルな視点でも優れた警察用バイクとしての地位を確立していると言えるだろう。
スズキ GSF1200P は、市販モデルである GSF1200 をベースに、白バイとしての仕様に改造が施された特別なモデルだ。スズキの白バイといえば GSX750P などが有名だが、GSF1200P はそれとは異なり、リッタークラスのパワーと油冷エンジンを採用した独自の特徴を持つモデルとして登場した。
このバイクが白バイとして導入された背景には、当時使用されていたホンダ VFR800P のモデルチェンジに伴う置き換えという事情がある。VFR800P の年式が古くなり、より高排気量でトルクのあるモデルが求められたことから、スズキの GSF1200P が新たな選択肢として採用されたのだ。
GSF1200P の最大の特徴は、スズキ伝統の 油冷エンジン を搭載していることだ。一般的に、白バイに採用されるエンジンは水冷が主流だが、GSF1200P はスズキ独自の油冷技術を活かし、高い耐久性と安定した出力特性を実現している。
水冷エンジンほど冷却機構が複雑ではないため、メンテナンス性に優れ、耐久性も高い。このため、長時間のパトロールやアイドリング状態での待機が多い警察業務にも適している。
GSF1200P の基本的な車体サイズは以下の通りだ:
白バイ仕様の装備を取り付けることで、全幅や全高は市販車よりもやや大きくなる。特に特徴的なのは、白バイ専用設計のフロントカウル だ。市販車の GSF1200 にはなかった独自デザインのカウルが装着されており、これにより空力性能の向上と警察装備の取り付けがしやすくなっている。
また、白バイ特有の装備として、
などが取り付けられている。特にパニアケースは、警察官が使用する装備や書類を収納するために大容量設計となっている。
基本の車両重量は 231kg で、ここに警察仕様の装備を追加することで、さらに重量が増加する。これにより安定感が増し、高速走行時の挙動が落ち着くように設計されている。
燃料タンクは 19 リットル を確保しており、市販車と同じ容量だ。これは VFR800P(21 リットル)や FJR1300P(25 リットル)と比較すると若干少ないが、街中の巡回業務が中心となる白バイとしては十分な容量と言える。
GSF1200P は 2004 年から国内の警察に導入 され始めた。当時の白バイはホンダ VFR800P が主流だったが、VFR800P は 800cc クラスの V 型エンジンを搭載しており、高速道路ではパワー不足を感じることがあった。そこで、より大排気量でトルクのある GSF1200P が導入されることとなった。
このモデルの導入は主に 警察の車両更新 によるもので、ホンダ一強の白バイ市場にスズキが食い込む形となった。特に、低回転からトルクを発揮するエンジン特性は、白バイの任務において有利に働いたとされている。
しかし、後継モデルとして水冷エンジンを採用した スズキ GSX1250F などが登場すると、GSF1200P の採用は徐々に減少していった。それでも、スズキらしい個性的なデザインと油冷エンジンの独自性は、多くのライダーや警察関係者に記憶されている。
白バイの歴史は 100年以上 にわたり、日本の交通安全を支えてきました。最初は赤色だったものの、1936年以降は白色に統一され、「白バイ」として定着しました。
また、大型バイクや4気筒エンジンが採用される理由は、長時間の巡回や高速走行に適した性能が求められるためです。
以上の事から現在でも、Honda・Yamaha・Suzukiといった国内メーカーの高性能バイクが白バイとして活躍しているのです。
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